聖夜に光あれ


 人跡稀な山奥に、ヘリと人影が二つ。


「・・・寒ィ」

「言うなヨ、余計寒くなる」

「だって寒いだろうが」


「まったくサエねェクリスマスだこと」

「そーいやクリスマスだっけ」

「そーいやってお前ェ」

「縁がないもんでね」


 ルパンの『縁』にしたところで、女とアレコレする口実だろうが。


「クリスマスフェアの特別展示ってンで、ルビーとキャッツアイ戴いただろ」

「そうそう、それでお前が浮かれてな」

「だってよォ、あの時のとっつあんの顔ったら、ケッサク。
もう一度見ときゃよかったぜ」

「だからって浮かれすぎなんだよ」

「なに怒ってんだ」

「そりゃ怒りたくもなるだろ?」

「・・・まあ、不二子の事は赦してやれヨ」

「やだね」

「いいじゃねェか、キャッツアイは残ったんだ」

「キャッツに三人、ルビーは不二子に独り占めってか」

「その代わり警察の包囲をくぐれた」

「あんなの、本気にすればなんてことなかったンだぜ?」

「クリスマスだ、いいじゃないの」

「だからなんでそうなる」


「汝隣人を愛せよ」


「けっ、生憎俺はキリストじゃねェからな」

「まぁだムクれてんの、次元ちゃん?」

「そりゃあ、タダ同然でルビーを・・・あぁ?」

「ん、どうした」

「待てよ、もしかしてわざと・・」

「え」

「あの時不二子が・・・っておい、手前ェ」

「わっわっ・・・」

「不二子にクリスマスプレゼントを、なんて考えてたんじゃねェだろうな!」

「いや、まっさかぁ」

「どうも変だと思ったんだ。何が『手荷物検査があるから預かっておく』だ。
俺と五右ェ門が承知しねェだろうからって見え透いた取引しやがって!」

「だって、しないだろ、二人とも」

「だからって、馬鹿げた芝居を打つこたねェだろうが!」

「八方丸く収めようとね、マァその」

「収まってねェよ。全然」

「隣人愛だよ、隣人愛」

「このヤロウ・・・」



「あ、もっと縁の無い御仁のお帰りだ」

「五右ェ門か?」


「オーイ、どうだった」

「残念だな、この近辺に人家ナシ、だよ」

「・・・そうかい」

「そう肩を落すな。俺だって散々歩き回ったンだ」


 銭形が逃走用のヘリのガソリンを抜いておいてくれたおかげで、
どうやら三人は雪中の一夜を過ごすことになったようだ。


「クリスマスってのは、一生に80回しかねェってのによォ」

「おいルパン。80まで生きるつもりか」

「物の喩えだよ」

「そうだよな。80回も不二子にプレゼントやれねェもんな」

「シツッコイぜ、次元」

「ん、何だって?」

「いやいや、何でも無い何でも無い。

 それにしても、せめて馬小屋でもあったらなア」

「馬小屋?何のことだ?」

「・・・あー、五右ェ門チャン。今夜は聖夜のオトギ話でもしてやるよ。
 せっかくとっつあんがくれたホワイトクリスマスだッ!」


 やけになったドロボウ達の上に、一片の雪が降ってきた。



冬眠中にクリスマス企画としてアップしておいたもの。
・・・さて、一体何人が気付いてくれたでしょーか(苦笑)
企画モノなので、お遊び的に台詞だけにしてみたり、展示中は黒背景にしてみたり。
それにしても恋人達の季節(笑)だってのに女っけ全くナシ。




モクジへ     ハジメから





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